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IPOの初値にみる行き過ぎた世界

2020年10月12日(月)

IPOの初値騰落率が144.25%と高騰している。

初値が高いだけでなく、高くついた初値の上値を追う動きがある。

正直なところ、危ない賭けを興じているとしか言いようがない。

東証マザーズ指数も過去10年において高値に迫っている。

新興市場株がこんなに買われるのは本当に久しぶりであり、株価の価値を測る指標のPERやPBRでは計れない水準になっているものも多く、危うさを感じざるを得ない。

この背景には、世界的な金融緩和と財政出動により、民間部門にマネーがあふれかえっていることがある。

資産運用はリスク資産100%でも許容されると言われるほどで、リスクフリー資産と呼ばれる国債には魅力がなくなっているのも事実である。

だが、ここでよく考えて頂きたいことがひとつある。

日本において、国債の利回りは2019年を通してマイナス圏で推移していたが、ここに来てプラス圏となっている。

日本株のPERはアベノミクス始まってから最高水準にある。 逆数の益利回りは低下しているということである。

益利回りー国債の利回り=イールドスプレッドは、昨年の今頃に比べるとかなり低下している。

益利回りは下がり、国債の利回りは上昇している。

この現象は一時的なものであり、1年後には劇的に改善するとの見通しで、いまの日本の株式市場は成り立っているといえる。

では、この見通しが正しいのか、それとも、そうでないのか? 

これは神のみぞ知る、と言いたいところだが、おそらく、1年前に水準に戻るには、まだまだ時間がかかることは皆が承知しているはずである。

では、なぜ、株価が高いのか?

それは、もはや、株価は理屈で成り立っていないからであろう。

単に、緩和+財政マネーの勢いが勝っているからとしかいいようがない。

では、この緩和+財政マネーはいつまでつづくのか?と考えるのが妥当である。

緩和に関しては、これ以上は望めまい。 FRB議長も財政出動がないと経済は危ういと言っている。

財政はどうか? 米国は大統領選挙次第とえいるだろう。

日本の財政はどうか? この半年間の給付金、助成金、がもう一度あるかと言えば、無いと決めつけることはできないが、同じ規模はかなり難しいといえるだろう。

上半期は不景気なのに不景気感がなかったが、この下半期には不景気感がじわじわと広がりそうな感じがする。

このじわじわがいずれ、どこかでドテンする可能性も視野に入れる時期が訪れてきたよう思う。

株式市場のお祭りは米大領領選挙を境にして変化してくるのではないだろうか。

ここから先にくる夢見心地の世界よりも、現実を見るべきかもしれない。

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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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