Market Eye

最新記事
記事一覧
次の記事
 

時価総額100億に意味なし

2025年05月31日(土)

東証がグロース市場上場企業の時価総額を上場後5年を経ても100億円に達してない場合は上場廃止にする方向性を出してきた。

2020年に東証マザーズ市場に上場した63社の上場後の株価の動きを追ってみた。

63社の公開価格ベースの平均時価総額は111億円。

100億円以上は21社、100億円未満が42社だった。

2025年5月30日終値の時価総額でみると、100億円以上は22社、100億円未満は39社(2社は上場廃止)。

時価総額を伸ばしている企業は27社、減らして企業が34社。

時価総額を伸ばしている27社のうち10社は時価総額が100億円未満となっており、このままでは市場から退出も求められる。

時価総額を減らしている34社のうち5社が100億円超だが、この5社の時価総額喪失額は100億円を超す銘柄も2社ある。

この状況を見るにつけ、東証の新興市場である当時のマザーズ市場、いまはグロース市場は成長市場とは言い難いのは明らかである。

東証の時価総額100億円の線引きは、機関投資家が売買する規模とのことだが、100億円はあっても、果たして機関投資家が買ってくれるのかははなはだ疑問である。

しかしながら、現在の時価総額が100億円未満であっても、上場時の時価総額から大きく成長している銘柄もいくつかある。

公開価格時価総額と現在の時価総額を比較した上位5銘柄は以下のとおりである。

コード 市場    社名     公開時価総額(百万円) 時価総額(5/30) 増減率
7352 マザーズ Branding Engineer   2,515 43,319 1,722%
7095 マザーズ Macbee        5,508 47,700 866%
7317 マザーズ 松屋アールアンドデ 2,302 13,851 602%
4011 マザーズ ヘッドウォータース 2,215 12,880 582%
2987 マザーズ タスキ 3,551 20,131 567%

IPOの時は時価総額が50億円に満たなくとも、その後、大きく伸ばして会社があるということだ。

大手証券は、時価総額50億円に満たないIPOはやらない、とか言っているが、これをみれば、考えが変わるかもしれない。

入口のハードルを上げることに意味がないことを最後に言っておきたい。

そして、投資家は、新興市場にこそ大化けする銘柄がいくつも存在することを忘れてはいけない。



最新記事
記事一覧
次の記事
 

プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


最新の記事一覧