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ミスリードかもしれない

2022年11月09日(水)

本日の日経ネットに「業績相場」から「賃上げ相場」へ期待の記事がある。

私が思うに、米国株式市場を見ると、ついこの間までの調整局面は「逆金融相場」だった。

つまり利上げで株価のバリュエーションが下がる、言葉を変えると、PERが下がることで株価が下落した。

いまここで起こっていることは、利上げのスピードが調整されることへの期待値が高まり、バリュエーションの低下による調整局面が一服したことによる中間反騰となっているだけだ。

もちろん、アノマリー的な米中間選挙の後の株高への期待もある。

だが、次に控えているのは、「逆業績相場」の到来だ。

つまり利上げで消費が減退し、企業の利益が下がる、EPS(一株当たりの利益)が下がることによる株価の調整が起こることだ。

米国が景気後退に入れば、企業のEPSは10%程度の減少も有り得る。

米国で利下げの局面が当面無いとすれば、EPSが10%低下すれば、株価も1割程度の調整は避けられないということである。

それを目の当たりにするのは、来年1月後半の米国企業の決算発表になるのではないだろうか。

日本企業は、この中間決算で、増収増益の企業も多く、マクロでみる企業業績は上昇している。

つまり日本企業のEPSは上昇、株価も上昇というわけだ。

だが、記事の中にある、PERの水準がもう少し高くても良いとの評価には、やや疑問を感じる。

日銀のYCCが修正される可能性を黒田総裁が否定しなかった。

おそらく黒田総裁は意地でも金利を上げないだろうが、来年の春には日銀総裁は交代する。

次の日銀総裁は日銀マンの可能性が高く、路線変更が有り得る。

すでにそれを見越して、市場の金利が徐々に上がり始めている。

米国ほどの急な利上げは有り得ないが、たとえ10bpでも政策金利が上がれば、為替市場は機敏に反応するだろう。

米国はひょっとすると来年秋には利下げも視野に入るが、日本は利上げとなると、円高は必至となる。

ドル円の巻き戻しが起これば、ドル円相場は、10円幅以上で円高に動くかもしれない。

そうなると、この中間決算の業績の上振れの立て役者となった、円安効果はなくなり、業績はダウンする。

その業績予想が出てくるのが、来年GW前後の日本企業の決算発表となるだろう。

米国が先に業績の見通しが悪化し、その数か月後に日本は後追いとなる。

2023年は「逆業績相場」の正念場となることを念頭において、このラリー相場への取り組みを考えるべきだろう。

もちろん、相場なので、日経平均株価の年初来高値更新もあるかもしれないが、決して、高値掴みとならないように気を付けていただきたい。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH072EO0X01C22A1000000/

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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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