2022年IPO総括
2022年12月30日(金)
本年のIPO件数は91社となりました。
昨年の125社から大幅な減少となりましたが、その背景をいくつかあると思いますので、ひとつひとつひも解いていきたいと思います。
まずは、ロシアのウクライナ侵攻で、資源・穀物が急騰し、世界的にインフレが加速しました。
このインフレを止めるべく、米国、欧州では、中央銀行が過去に例を見ない利上げを行いました。
米国のFRBは三倍速利上げを実施し、米国の株式市場、とくにグロース株中心のナスダック指数は大きな調整となりました。
これまで米国の株式市場をけん引していたGAFA銘柄も年末には年初来安値を更新するような下げに見舞われてグロース株は完全に崩壊してしまいました。
日本においても東証マザーズ指数は年初から売られて、夏場には年初来安値を付け、その後は低位で推移しています。
ナスダック市場に引っ張られる形で、マザーズ指数が売り込まれたように見えますが、日本には日本固有の理由があって、マザーズ市場が低迷していると私は見ています。
それが、4月に東証が行った市場再編です。
これまでは、マザーズ銘柄は、2年で5億円以上の経常利益、時価総額40億円で東証1部に鞍替えすることができました。
ところが、4月以降は、2年で25億円、時価総額が250億円ないと、グロース銘柄はプライム市場に鞍替えできなくなりました。
このハードルはかなり高く、4月以降にグロース市場に上場した銘柄で、形式基準を満たす企業は1割程度です。
裏を返せば、グロース銘柄がプライム銘柄になることは難しく、機関投資家が買うことはできない銘柄群がグロース市場になってしまったわけです。
このグロース市場の低迷の原因を解消する術はいまのところ見えず、しばらくはこの状況が続くものと思われます。
さて、さりとてIPO人気がなくなったわけではなく、91社の平均初値騰落率は+50%台を維持しており、今年最後のIPOとなったスマサポは上場当日には値が付かずに、初値は大納会に持ち越されました。
ですが、初値が好調なら、セカンダリーも好調とは言えず、上場直後の時期だけは物色対象となりますが、数日経つと出来高が急減して閑散相場入りする銘柄が多く見受けられます。
投資家がこの状況で勝てる投資ができるかといえば、答えは「YES」です。
株価を構成する要素は、利益とPERです。
PERは、利上げがあると、下がりますので、ここの部分だけを見れば、来年は本格的な利上げが日本でもあるかもしれず、PERが上がることを期待することはできません。
ですが、利益は企業の成長性に連動するわけですから、例えPERが上がらなくても、利益は3割成長すれば、株価はすくなくとも3割は上がるはずです
この利益成長する企業を探し出すことが投資家のだいご味でもあります。
ですが、上場したばかりの企業が成長するかどうかははっきり言ってよくわかりません。
特定の投資家だけがすぐれた選球眼を持っているわけではなく、利益の成長する銘柄を当てるようなことはできるわけがありません。
ではどうするのか?
優秀なファンドマネージャーは、企業業績をひとつひとつ見ることによって、企業の業績予想と結果を見ていきます。
そして、有言実行で結果を出す企業を選別していくのです。
それが、エムスリーやモノタロウになっていくわけです。
この2銘柄を見ていればわかるように、相当長い期間にわたって株価は買われ続けました。
このような銘柄を見出して長期保有する。
これがIPO投資の本質だと考えています。
2022年の91銘柄の中に、大きく成長する企業があるのかどうかは定かではありませんが、大変楽しみな銘柄もあります。
この年末年始、時間があるときに、じっくりと振り返ってみていただきたいと思います。
来年、2023年も株式市場のボラティリティはかなり大きいと考えておいたほうが良いでしょう。
IPOも市況しだいで厳しい時間帯があると思いますが、中には夢と希望が大きく広がる事業体が出てくることが予想されますので、楽しみにていただきたいと思います。
それでは、皆様、良い新年をお迎えください。
IPOジャパン 編集長 西堀敬