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公開価格が安すぎる

2023年04月15日(土)

メディアの報道で、証券大手のみずほ証券が新規株式公開(IPO)価格を不当に安く設定し、独禁法違反(優越的地位の乱用)につながる恐れがあったとして、公正取引委員会は13日、みずほ証を口頭で注意した、とある。

企業の資金調達額が減り、不利益を与えた可能性があるという。

みずほ証は2020年6月~21年5月、21件で主幹事を務めた。このうち2件で新規上場企業の主張を大幅に下回る想定発行価格を提示するなどした。最終的に企業側も応じたため、株式の公開価格も低く設定されたが、実際の初値はいずれも2倍以上高くなった、らしい。

資金調達がもっとできたという企業の主張を公正取引委員会がまともに受け止めていたとしたら、正直なところ、市場というものをまったく理解していないと言えるだろう。

「初値」は、需給によって決まるもので、その会社のフェアバリューを表現しているとは言いにくい。

IPO銘柄の上場日の値動きを見てみると、上場日の終値はやや弱含んむで終わる。
そして5営業日を見ると、かなり下落している。

また、初値が決まる要素が需給だということは、誰でもわかるはずだが、供給が多くなれば、需要は少なくなる。

もし、初値の水準で公開価格を決めていれば、初値が3倍であると、3倍の額の供給になるが、さて初値はどうなるだろうか?

少しくらい高くところで初値が付くかもしれないが、値持ちは良くないはずだ。

最近のIPO銘柄を見ていて思うことは、赤字やたいして大きくない利益しかでていない銘柄が多い。

株価はPSRで〇倍だと言われても、株価の源泉は利益じゃないの?と誰もが思うはずだ。

理屈もなく、我々投資家が理解できない株価で公開価格を付けておいて、発行体(企業)が、株価が2倍以上になったから、公開価格は安すぎたと主張するのはいかがなものだろうか?

せめて、赤字で上場してきた企業は、上場時の公開価格がどうしてその株価になったのかをきちっと説明して欲しいものである。

そうすれば、上場後も赤字であっても、同じロジックで考えれば株価に妥当性が出てくるはずだ。

でないと、赤字だと初値は良いが、その後が続かないはずだ。

公正取引委員会は、証券会社が優越的な地位で、公開価格を低くしたとしているが、もし、すべて予想初値を公開価格にしていたら、ほとんどの銘柄で初値が公開価格割れとなるかもしれない。

今度は投資家の立場で公正取引委員会に言い寄るしかない、証券会社は株価を高くして、自らの手数料稼ぎをしているだけで、投資家無視だと。

いや、投資家は公正取引委員会なんかに言い寄らずに、IPO株を買わなくなるだけだろう。

そして、日本のIPO市場が崩壊するだろう。

そんなことはあってはいけないわけで、やはり、IPO企業は、成長企業なんだから、最初に付きあってくれる投資家にメリットを提供して自らのファンを作るべきだろう。

記事のURL
https://news.line.me/detail/oa-jiji/h4yvo6d1uck9?fbclid=IwAR1ZDJJOfuv_1DfBsU7wFbFdnubbeYv21I6s51U3O_0G2Zi4tH6XF_YHNiA

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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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