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リスクは忍び寄る

2017年11月27日(月)

非常に興味深いロイターの記事があったので紹介しておきたい。

世界景気は空前の好景気となっているが、リスクは見えないところで市場に忍び寄っているかもしれない。

その兆候がジャンク債に現れてきた。 世界中をくまなく駆け巡っていたマネーが縮小を始めているかもしれない。

ロイターの記事は以下のサイトにある。
https://jp.reuters.com/article/column-us-mcgeever-idJPKBN1DO0CY?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Weekday Newsletter (2017) 2017-11-27&utm_term=JP Daily Mail" target="_blank">https://jp.reuters.com/article/column-us-mcgeever-idJPKBN1DO0CY?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Weekday Newsletter (2017) 2017-11-27&utm_term=JP Daily Mail

(本文)
ロンドン 22日 ロイター] - 米国は経済成長も企業収益も堅調で、失業率は数十年ぶりの低水準、インフレの心配もない。それなら連邦準備理事会(FRB)があと2、3回利上げしても米国と世界の経済はびくともしないだろうか。

答えはおそらくノーだ。

米国の家計債務は過去最大規模に膨れ上がり、米国ほか、世界各地の株価や高利回り債(ジャンク債)の上昇は行きつくところまで行ってしまった。

FRBは慎重に利上げを進める姿勢だが、何度も利上げするまでもなく、このような状態は自ずと腰折れするかもしれない。

世界的株高の最初の亀裂は、今月初めに入り始めていた。高利回り債の下落が、米国その他の株式市場に波及。ボラティリティが跳ね上がり、米国債の利回り曲線は過去10年間で最もフラット(長短金利差が縮小)になった。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのグローバル・ジャンク債指数.MERHWooは2週連続で下がった。これは過去1年で初めてのことだ。14日までの週には高利回り債ファンドからの流出額が68億ドルと、過去3番目の規模となった。

ここで「高利回り」債の利回りがどれだけ低くなっているか、おさらいしておこう。世界全体では最近5%を割り込み、欧州では2%割れに近くなっている。つまり欧州では、投資適格級に届かない社債の利回りが、米国債の利回りを下回っているのだ。

このような市場が、どれだけ利上げに脆弱かはお分かりだろう。

問題は、FRB自体が自然利子率の水準を把握できていないことだ。FRBは現在、2.75─2.80%前後との推計を示しているが、6月時点ではこれが3%で、2015年初めの推計値からは100ベーシスポイント(bp)も下がっている。今後も下方修正されないという保証はない。

自然利子率とは、無謀な借り入れや投資を招くほど低くないが、経済活動を圧迫するほど高くもない金利水準を指す。

欧州最大級の資産運用会社アムンディのパスカル・ブランク氏は、FRBは自然利子率を過小評価しているよりも、過大評価している可能性の方が高いと指摘する。

ブランク氏は、米経済は表面的には堅調だが、実際は「薄氷の上を歩いているようなものだ」と言う。

ニューヨーク連邦準備銀行が先週公表した調査結果に、そうした脆弱性の一部が表れている。第3・四半期に家計債務が1160億ドル増え、過去最大の12兆9600億ドルに達したのだ。それまでの記録は2008年の第3・四半期なので、何か悪い予感がする。

住宅ローン債務は08年当時より少ないが、自動車ローンとクレジットカード債務は当時を上回っている。連銀の調査によると、この2種類の債務のデフォルト率は上昇している。

ロンドン大ゴールドスミス校の経済学上級講師、ジョンナ・モンゴメリ氏は、FRBが今試みているのは2004─06年と同じ「皿回し」だと手厳しい。金利を徐々に引き上げることで、経済成長のエンジン役を果たせる程度に家計債務が増え続けることを望んでいるという。

しかし前回と同じく、皿は落ちて終わる定めだ。政策当局者が経済成長を家計債務に頼っているのと同じように、家計は生活水準の維持を借金に頼っている。

モンゴメリ氏は、景気後退を招かずに家計債務を減らすのは不可能に近いと指摘。「経済成長を維持するには債務を増やすしかないが、成長の息の根を止めるのは、ほかならぬ債務の返済。つまりこれは債務の罠だ」と語る。

明らかなのは、債券市場が皿回しの成功を信じていないことだ。過去10年で最もフラット化した利回り曲線は、8年間続いた経済成長が間もなく息切れするか、さらに悪い事態に陥る可能性を暗示している。

逆イールド(長期金利が短期金利を下回る逆転現象)まで、あと数bp。逆イールドは昔から景気後退の前兆とされ、これまで不気味なほど当たっている。

足元のフラット化のスピードは著しく、長短金利差は11月に入って20bpも縮小した。この調子で進めば1月には逆イールド化し、FRBは薄氷の上でスケートしていたことを思い知らされるかもしれない。

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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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