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アベノミクス終焉

2020年08月30日(日)

安倍総理が辞任を表明した。

金曜日は、その報道を受けて、日経平均株価は一時600円安となった。

その後、日経平均株価は切り替えして戻したが、週足のローソク足チャートを見ると、なんとなく流れが変わりそうな十字となっている。

思い起こせば、8年9カ月前の衆議院選挙で自民党が大勝して安倍政権が始まった。
2012年12月の日経平均株価は約1万円だった。

それが、2018年10月には安倍政権下の高値を付けたが、その後、高値を抜くことなく今日を迎えている。

昨年秋には消費増税もあって、日本経済の成長は止まっていたことがつい先日発表された。

この先の株式市場はどうなるのか?

市場関係者へのインタビューでは、安倍総理の辞任は市場への影響は限定的との意見が多い。

株式市場の動きは、次の総理次第との声もあるが、私は、誰が総理になっても、アベノミクスほどの株価へのプラスの効果は出ないと考えている。

むしろ、アベノミクスの原動力となった3つの戦略が損なわれることを危惧する。

そのひとつが、金融緩和だが、その中でも、日銀のETF買いが減額されたり、止まったり、すれば、大きな買いの主体がなくなり、先物を使って、日経平均株価を押し上げるようなヘッジファンドの動きも出て来る可能性は十分ありえる。

また、大胆な財政出動も、コロナで大きな財政支出をしたばかりで、この先のコロナ対策も考えると、財政に期待するのは難しいのではないだろうか。

この二つのエンジンが止まるかどうかであるが、財政は厳しいことは誰でもわかる。 

では、金融緩和はどうだろうか。 これはひとえに、黒田日銀総裁が続投するかどうかにかかっているといえるだろう。

黒田日銀総裁の任期は2023年4月8日まであり、あと2年8カ月あるが、年齢は76才である。

過去の日銀総裁の在任期間を振り返ると、2期目の総裁は任期満了まで続けている人がいない。
ほとんどが2~3年目に辞任している。

アベノミクスの演出は、安倍総理+黒田総裁であったと言っても過言ではない。

今回、安倍総理が居なくなり、もし、黒田日銀総裁までもが辞任との報道がでれば、日経平均株価の下落は600円で留まらないのではないだろうか。

アベノミクス政策の継続が求められるが、総理ともなれば、前任者と同じことをやっていては芸がない、記憶も記録、にもの残らない政治家になりたくないのは誰しも同じことだろう。

今の株式市場にとっては、政策が大きく変更になることが最大のリスクではないだろうか。

となれば、安倍総理の急先鋒であった、石破氏が、もし、総理になるようなことになれば、株式市場にとっては大きなリスクになるかもしれない。

また、石破氏と黒田総裁の意見が合うとは思えない。

9月15日に自民党の党首選があるとのことであるが、誰が次の党首になり、総理になるかによって、この秋の相場は大きな動きがあるかもしれない。

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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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