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IPO激減

2025年11月07日(金)

今年も余すところ2か月を切ってきた。

IPO市場を見ると、年内上場銘柄は再来週には出そろうことにりそうだが、どう考えても70社程度にしかならいようだ。

昨年が86社なので3割以上減ることになる。

これは、東証のグロース市場改革にあるのは間違いない。

上場後5年で時価総額100億円を越さないと、グロース市場での上場維持はできなくなる。

但し、スタンダード市場への移行という道があって、スタンダード市場なら時価総額40億円程度で上場維持できるという措置を講じると東証はアナウンスしている。

だが、ここに来て、スタンダード市場の上場維持基準の見直しもやりそうだという話が出てきて、東証は最終的には上場後時価総額が100億円程度はないと上場企業として認めないということになるのではないかと、上場準備中の企業は戦々恐々としている。

一方、IPOをビジネスにしている証券会社にとっては、小粒であればあるほど、初値が飛ぶこともあって、小粒のIPO銘柄は、プラチナペーパーとして価値があって、個人投資家を呼び込む切り札でもあったのだが、その数が減少してくることは、IPOビジネスそのものに魅力を感じなくなってくる可能性もある。

株式市場だけでなく、ベンチャー企業にあっても、上場前にユニコーン(時価総額1000億円)になることが、事業成功の証のような風潮がある。

上場時に時価総額が1000億円超の銘柄の値動きはさほど大きくなく、機関投資家の投資対象となるかもしれないが、値動きが小さい銘柄への個人投資家の興味はかなり低いと言える。

ここに、東証と個人投資家には大きなギャップがあるのだが、東証の心は、売買代金にあり、個人投資家の心は、値幅にあるということだろう。

短期に値幅を取って儲けたい個人投資家、売買代金で儲けたい東証、このギャップは永遠に埋まらない溝だろう。

東証も上場企業だから、東証が儲かるためには売買代金を増やすことが一番、時価総額が大きな銘柄であれば、売買も増えて儲かる、そのしわ寄せが東証のグロース市場改革に繋がり、ベンチャー企業のIPOのハードルを高くして、個人投資家の儲ける機会を失くしているともいえる。

証券取引所の役割とは何か、立場によって言うことが異なるのは当然だが、投資家あっての取引所だから、いろんな属性の投資家が幅広くメリットを享受できる場とすることが重要であるはずではないだろうか。

IPO企業数の減少がこのまま続くことに懸念を感じる晩秋となりましたが、東証にはこれ以上上場維持のハードルを高くしないように節にお願いしたいと思います。

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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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