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IPO激減

2025年12月03日(水)

2025年のIPO社数は昨年の86社から65社へと激減となりそうだ。

スピンアウト上場のソニーフィナンシャルグループ株式会社を入れても66社、2014年まで遡っても77社、2013年が54社なので、IPO冬の時代が到来したと言っても良いかもしれない。

東証の市場改革で、グロース市場上場後5年で時価総額100億円に到達しなければ上場廃止となる。

救済措置として、スタンダード市場への移行は可能なので、時価総額が40億円程度あれば、スタンダード上場基準は満たせる。

新規上場上場基準は変えずに、維持基準だけハードルが上がったわけだから、上場準備中の企業は、5年で時価総額100億円が見えてから上場しようと思うのは当たり前で、来年上場しようと考えていた企業は、1年ないし2年は上場を思いとどまるという動きが出てくるはずだ。

主幹事証券会社にとっては、上場時の時価総額は上がることは、数を追うことなく手数料が稼げるということで渡りに船となる。

ただ、投資家にとっては面白くないのではないか。

時価総額が小さい生まれて、数年で何倍にもなるような銘柄が減るということに繋がりかねないのではないか。

2014年11月にSHIFT(3697)が上場した。 公開価格時価総額は34億円だった。

その後、9年で時価総額が約6000億円となった。(現在の時価総額は約2500億円)

時価総額は176倍となったわけだが、もし、100億円で上場していたら60倍となる。 

もちろん60倍だとしても凄いことだが、時価総額が小さいからと言って、上場を躊躇するようなことはあってはならないのではないか。

上場のメリットを経営に生かす、これが上場の目的であるはずなのだが、東証は、機関投資家が売買できる規模を求めている。

証券取引所にとって、上場企業はお客様だし、上場株は商材でもある。

成長性のある企業は、時価総額がたとえ20-30億円程度であっても、上場してもらって、そのメリットを存分に生かしてもらい、その結果として、取引所にとって売買の対象となる銘柄に成長してもらえればよいと考えるがそうだろうか。

その代わり、多産多死もやむを得ないと考えるべきではないか。

取引所が上場企業であることで、社会性よりも、上場企業としての収益を考えるがゆえに、少し違った方向に行っているように思う。

新規上場企業数がこのまま低迷するのではなく、多くのIPOが生まれることで、より多くのベンチャー企業がそのメリットを生かして成長していただきたいものである。







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プロフィール

西堀敬(にしぼりたかし)

西堀敬(にしぼりたかし)

IPOジャパン編集長
(株)日本ビジネスイノベーション代表取締役
日本テクニカルアナリスト協会検定会員

1960年滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。和光証券(現、みずほ証券)の国際部、ウェザーニューズ財務部長、米国系Eコマース会社の日本法人 CFO&COO、IRコンサルティング会社取締役を経て、2011年より現職。上場会社の社外取締役を複数兼務する。
また、2002年より東京IPO編集長、2015年12月よりIPO No.1サイト『IPO Japan』を監修、編集長に就任。TV出演や経済誌への執筆、セミナーや講演会などIPOの第一人者として市場の啓蒙・発展に尽力している。

著書に『改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!』(すばる舎)、『IPO株の本当の儲け方』(ソフトバンククリエイティブ)。


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